今回は社会問題のひとつである「いじめ」が原因でひとりの男子中学生が自殺に追い込まれた大津市中2いじめ自殺事件についてご紹介していきます。
まずは事件概要から紹介していくよ。
事件概要
この事件は、2011年10月11日に滋賀県大津市内の中学校に通っていた、当時中学2年生の男子生徒がいじめを原因として自殺するに至った事件です。
学校や教育委員会の隠蔽体質が露呈した事件でもあり、当時大きく報道されました。
9月からいじめが始まったとされており、そのおよそ1か月後に男子生徒は自ら命を絶ちました。
男子生徒は、体育館で手足を鉢巻で縛られ、口を粘着テープで塞がれたり、殴る蹴るなどの暴力行為を複数の同級生から受けていました。
また自殺直前の10月8日には、加害者の生徒が男子生徒の自宅を訪れ貴金属た財布を盗むなどの行為を行いました。
そして自殺前日に、男子生徒は加害者生徒に対して自殺をほのめかすメールを送っています。しかし、加害者生徒はこれを相手にしなかったと言います。
そして、10月11日の朝8時頃男子生徒は自宅マンションから飛び降り自殺しました。
男子生徒の自殺後も、加害者生徒らは男子生徒の顔写真に穴をあけたり、落書きするなどの行為を繰り返していたと言います。
そして男子生徒の自殺後、学校と教育委員会は担任も含め誰一人としていじめに気付いていなかった、知らなかったと主張しました。
しかし、学校側は生徒が自殺する6日前に「生徒がいじめを受けている」と報告を受けています。これに対して、学校側はこの件について対応を検討したことは認めたが、いじめではなく生徒同士の喧嘩だと認識していたと説明しました。
加えて、当時男子生徒の自殺の原因はいじめではなく家庭環境に問題があると主張したのです。
学校側がいじめの事実を隠蔽しているのが明らかだよね。あまりにもひどい。
同級生によるいじめの概要
男子生徒と加害生徒は当初、仲が良かったと言います。
しかし、同級生の女の子が男子生徒に対して「あ、キモイ」と言い出したのが原因でいじめが始まりました。
そして、プロレスごっこが徐々にエスカレートし暴力行為へと発展していったようです。
- 顔を中心に殴られる
- 死んだすずめを口に入れろと言われる
- 土下座の強要
- 頭の上から消しカスをかけられる
- 上靴のまま頭を踏みつけられる
- ペンのインクで机や服を汚される
- 成績カードを破られる
など、数多くのいじめ行為が日常的に行われていました。
どんどんといじめ行為はエスカレートし、休み時間になると男子生徒は加害生徒から馬乗りになられて顔面を何度も殴られるなどの暴力を受けていました。
男子生徒がやめてと言っても、加害生徒はやめることはなかったそうです。
さらに、男子生徒の自殺後、生徒たちにアンケートを行った結果、「自殺の練習とお葬式ごっこ」「万引きと金品の強要」があったという回答もありました。
自殺直前の男子生徒の様子
自殺の2日前、男子生徒は部活動に参加していましたが朝の時点から元気がないと感じている部員がいました。
ですが、その後部活の帰りに男子生徒はコンビニの店内で鬼ごっこをしていたところを、コンビニの店員に叱られると言う出来事があったと言います。この時、友人は男子生徒はとても元気そうに見えたと話しています。
そして、自殺前日。男子生徒は母親が運転する車でお墓参りに行くなどしており特段いつもと変わった様子はなかったと言います。
そこで、父親へのお土産を選んだりおにぎりを食べたり楽しそうに過ごしていたと言います。
帰路につき、家が近づいた時男子生徒は「もう着くんか。いややなあ。」と言っていたそう。
そしてその夜はいつもと変わらず、テレビを見るなどして過ごしたと言います。
自殺当日、父親は朝早くから仕事へ出かけました。その後男子生徒から着信があったと言いますが会話をすることはできませんでした。
そして午前8時過ぎ、男子生徒は自宅マンションの14階から飛び降り自殺をしました。8時29分現場に救急車が到着し、男子生徒の友人が同乗して病院へと搬送。
しかし、午前9時3分に搬送先の病院で死亡が確認されました。
学校側の対応
クラスの担任だった教員は、男子生徒から直接相談や暴力行為を受けているとの報告を受けていたにも関わらず適切な対応を取らず、保護者説明会にも姿を見せませんでした。
その他、遺族への謝罪も行わなかったのです。
刑事事件として
2012年7月、滋賀県警は市の教育委員会や学校に対して強制捜査を行いました。そして、男子生徒の父親は加害生徒3人を刑事告訴し、県警は12月に男子生徒へのいじめを行った主犯格の加害生徒3人のうち2人を書類送検しました。
もう1人は当時、刑事罰の対象とならない13歳だったため暴行などの非行で児童相談所へと送致されました。
そしてこの加害生徒3人は一貫して「遊びだった」「嫌がっているとは思わなかった」などと主張しました。加えて詳しい話しになると「覚えていない」との主張を繰り返しました。いじめだったという認識を示すことはなかったのです。
県警は、暴行の他器物損壊や窃盗など合計13件についてを立件。
そして、2014年3月に大津家庭裁判所は、加害生徒3人のうち2人を保護観察処分、1人を不処分としました。
民事裁判
遺族は、2012年加害者3人とその保護者、大津市を相手に約7720万円の損害賠償請求を行いました。
遺族はさらに2013年、学校側がいじめを認識していたにも関わらず適切な対応をしなかったとして市の過失を訴える書面を地裁へと提出しました。
そして2015年、大津地裁は市が設置した第三者委員会の報告書に基づきいじめの存在を認定しました。
遺族、同級生の想い
男子生徒が自殺をしてから2年後には「いじめ防止対策推進法」が成立しました。しかし男子生徒の父親は、多くの教育現場でいじめを苦に若者たちが命を絶つに至った原因などの調査が十分ではなく、学校側の隠蔽体質が変わったとは思えないと苦言を呈しています。
そして、息子が命がけで作った法律なのに、子供たちを守れていないと無念の想いをにじませています。
当時、男子生徒の同級生だった生徒が事件発生10年後に取材に応じ、「自分たちに何が出来たのだろう」と当時を振り返っています。
同級生によると、自殺した男子生徒は「クラスのムードメーカーで、すごく明るい性格。友人たちからわざといじられて周囲を笑わせるタイプだった。」と言います。
しかしこの性格故、いじめが見えにくくなっていたと振り返りました。
そして、学校や生活の中で周囲がささいな異変に気付くことが重要だと訴えています。
さらにもう一人の同級生は、いじめの加害生徒について「1人は周囲から頼られるタイプ、もう1人はやんちゃだがいじめをするような印象はなかった」と言います。
当初仲が良かったのになぜという思いをぬぐえず、今もなお男子生徒の自殺の真相を知りたいという強い気持ちに変わりはないと語っています。
まとめ
今回は、いじめが発端となって男子生徒の尊い命が失われた事件に関してご紹介しました。
遊びのつもりだったでは片づけられませんよね。
男子生徒のご両親はいじめに対して学校や教育委員会が、隠蔽することなく真摯に向きあってくれることを願っているんだね。